陽だまりの子

Child In The Sun

100. その形

私の書く文章は、標本のようなものだ。私の夢の拓本、押し花。私は夢の形をそのまま残そうと、その形を文字という手で紙に押し付ける。

私は画家でも彫刻家でもないし、写真家でもない。自分の目に見えるものを他人に見せるには文字でそのイメージを縁取り、文章で肉付けしていくしかない。だが、その文章に力があるわけではない。私の文章はただ、自分の目に見えるもの(現実、非現実を問わず)をそのまま書き取ったものだ。万が一にでも私の文章を読んで感動した人がいるとすれば、その人は私の文章に感動したのではなく、私の見たものを文章のスライドを通して見て感動したにすぎない。それは、プレパラートの薄いガラスの上で潰れた、私の夢の標本なのだ。

自分には文章を書く力があると奢っていた時代は過ぎた。私はただ、書いて書いて書き続けている。夢の標本を作り続けるために書き続けている。