陽だまりの子

Child In The Sun

041. メロディー

どきどきする。全身の毛穴がそそけだち、首と肩だけが冷たい。腋の下にじっとりと汗をかいて私は目を醒ました。

いつもの不整脈だ。心配することはない。冷蔵庫を開けてペットボトルを取り出して、ミネラルウォーターを一口飲んだ。完全に飲み下した後で、一口では足りない気がしてもう少し飲んだ。動悸は収まらない。私は冷蔵庫の前にぺたんと座り込んだ。

夢の中で私は小さな池で沐浴をしていた。どこから流れ込んでくるのか水がゆらゆら揺れながら私の足の間を流れていく。水温が高いので水面から立ち上る湯気が空を少しずつ私の目から遠ざけていった。私は自分の水音に不安だった。自分の水音が何かを呼ぶ歌のようで不安だった。不安をかき消そうと掌と掌の間で水をぱちゃぱちゃやっていると、湯気の向こうから死体が流れてきた。まだ温かさの残る女の死体だった。ただ浮かんでいるだけ、こちらに流れてくるだけなのに、私はその刹那に彼女が死んでいることを悟った。彼女は私の知る人間の死体だった。私はその死体に触ろうとして手を伸ばした。だが、何かに遮られ死体には触れることができなかった。彼女の口が私の水音に誘われるようにゆっくりと開き、歌と一緒にどろりとした血が水面に広がった。

触れていないはずの死体の感触を確かめようと、冷蔵庫の前で目覚めた私は自分の体に触れる。首と肩だけが冷たい。