陽だまりの子

Child In The Sun

077. ストレス

弁当屋で買ってきたおにぎりを食べてしまうとビールを飲んで、そのままずっと本を読んでいた。今日は水曜日の夜だ。仕事が立て込んでいて残業しなければならず、六時半の医者の予約を断った。受付の人は慣れている。電話越しに僕を優しくたしなめた。
 好きで医者の予約を断ったわけじゃない。およそ利己的な、仕事で失態をさらしたくないという目的で僕は医者の予約をキャンセルした。それでも、受付の人は電話越しに次の予約を入れるよう勧める。知ってる。医者の営業だ。僕の体よりも、僕の体を検査して得られる金が本当なんだ。その金がなければ、あの受付の人も給料がもらえない。
 知ってるんだ。僕は知ってるんだ。何もかも気を回し、人間の心と考えを予知しようとしている。僕は次のビールを開ければ、翌日の仕事に差し障るほど深酒をしてしまうだろう。だが、飲まなければこの苛立ちと眠りが訪れるまで戦わなければならない。いいや、戦うのではない。僕はじっと耐え忍んでいるしかない。
 僕は、じっと耐え忍んでいる。だから一人なのだ。我慢する人間は決まって一人きりでいるものだ。