陽だまりの子

Child In The Sun

008. 夜

私の遣う言葉で、多いのが「夜道」という言葉だ。仕事の帰りがいつも遅く、明るいうちには家に戻れないということに起因していると思う。それなら朝の通勤は覚えていないのかと聞かれると、大体いつも同じ時間に出勤していると、道をすれ違う小学生から、クリーニング店の開店の準備、パン屋の香ばしい小麦の香りまで毎日大体同じようなものなのだ。

夜道は違う。毎日違う表情だ。私は、夜道を歩くときにすれ違う車のライトに時間を感じている。バス停の隣で息吹くバスの排気筒、ステーキ屋の切れかけた看板の電球、郵便受けからはみ出している私の真上の住人への朝刊。夜は違う。夜道は違っている。その違う夜道を歩くとき、私は一日が過ぎていくことを思う。