陽だまりの子

Child In The Sun

五色の山 - 西の金の山 第3話

 金山の麓に住まいする女が病に罹った。左脇の下に腫物ができて、それが酷く痛むのだという。微熱が続き、女は次第に痩せ衰えていった。薬餌及ばず、鍼灸も至るあたわず、病膏肓に入らんとするとき、殿医がそこに通りかかった。彼が黄精を搗き、酢で練ったものを腫物に塗りつけてやると、その腫物は二つに裂け、膿漿の中から血の塊のような真っ赤な卵が転がり出た。殿医がそれを王宮に持ち帰り、真綿のうちに置いておくと、十月十日の後にそのうちより一人の赤子が生まれ出た。赤子の皮膚は炎のように赤く、双眸は翡翠の如く青く輝き、唇の狭間からは金の歯が覗いていた。殿医はその子を見るなり、不動の生まれ変わりであると知って丁重に育てた。年を経るごとにその子は霊力を現し、王のために様々な働きを見せたが、十五になる前に王宮から姿を消し、彼の後を見る者はなかった。
 今、金山の麓には一つの不動堂がある。王宮から去ったその子が、金山の上はるかなる紫雲のうちに消えたという伝説が今もあるからだ。秋の深まる今頃の気候になると、金山の上には噴煙の如き紫の雲が湧き出でて、それがいつまでも去らずにある。その雲が鳴動すると、雪が降って冬が始まる。金山の麓に住む人は、その雲のうちで不動の生まれ変わりが手を叩き声を上げて笑っているのだと言う。