陽だまりの子

Child In The Sun

082. 暗闇

「私、おまじないができるの」
と、切り出した友人を私は何を言っているのかと問い質した。
「本当よ、おまじないができるの。このおまじないをすれば、嫌なことを消せるの。二度と思い出さなくなるのよ」
「どうやるの」
私も身を乗り出した。
「不意に、昔のことでもう思い出したくないこと、思い出すだけで鳥肌が立つようなことはない?」
「あるある」
「そのことを思い出してしまったときにはね」
と言うと、友人はばっと両手で顔を覆った。
「こうして目の前を真っ暗にしてこう唱えるの」
やだやだやだ、もうやだ、思い出さない。こんなこと二度と思い出さない。思い出さない。思い出さない。やだやだやだ。

本当よ、と笑った友人の眼は真っ暗だった。