陽だまりの子

Child In The Sun

071. 積み上げる

輪切りの犬を見た。その犬は輪切りだったが、そんなにグロテスクなものではない。ただ、足の付け根、腹、首から下、頭と四つに体を輪切りにされているだけだ。断面は薄いピンク色で、指の腹で押すとピーチパイのように柔らかである。その犬は転んだり、無理な体の動きをさせられたりすると、すとんと四つに分かれてばらばらに地面に落ちてしまう。その間、犬は生きているが体が分かれてしまったので動くことができない。不思議なことに、犬は瞬きもせず、ただじっとそこにいるだけなのだ。犬の体はあたたかく柔らかいままで、皿の上の冷めないピーチパイのよう。そして、四つの体を元通りに組み立てると、また動き出す。ピンクの断面から血が流れたりはしない(そんなことがあれば、元通りになったときに失血死してしまうから)。不思議な犬だ……、私はそのピーチパイの犬ともう3年も一緒に暮らしている。

はじめは気味が悪かった。何度も山奥に捨ててこようとした。しかし、いざ犬を林道に離しその隙に車を発進させると犬は追ってくるのだ。そして転ぶ。そして四肢ばらばらでそこにある。自分のためにばらばらになってしまった哀れな犬を誰が見捨てることができようか。私は車を停め、林道に飛び出し犬を拾い上げて組み立ててやるのだ。元通りに動けるように。そして私たちはともに家に戻る。

恐怖は感じない。一緒に暮らしている分にはこいつはただの犬だ。だが、ばらばらになってしまったときには困る。そのばらばらの体を見る恐怖よりも、組み立てることへの困惑が私を襲うのだ。犬の体は寸胴で、足と頭以外の部分を私はよく組み間違える。しかしよくできたもので、組み間違えたときには犬は元通りにつながらずピーチパイの断面を見せてまた地面に転がってしまうのだ。つながったときのつなぎ目は見えないのに、厳然とした整列が犬の体にはある。それは私にも同じことだ。足の爪先から頭頂まで私たちの体は地面から積み上げられ、空を仰ぐためにあるのだ。犬の体の整列は、私にそれを教えている。

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