陽だまりの子

Child In The Sun

053. ポケット

肩甲骨の間が痛い。風邪を引いて三日目。いい加減に休んだがいいと毎日自分に言い聞かせて布団に入るが、翌朝目覚めると存外に体調がいいのでツイ出勤してしまう。午後になって薬が切れてきて、ああ、自分の見込みが甘かったと気づく。だが、それも毎日のことになってくると痛みに対しても自分の苦痛に対しても神経が行き届かなくなるようだ。

しかし、今日は少し違う。肩甲骨の間が痛いのは毎日のことだ。しかし今日は手先が冷たくてかなわない。考え事をする際に私はいつも手を組んで頤の下に持ってきて、ぼんやり頭を揺するのが癖なのだが、今日は手の冷たさにそれができない。手を顔の下に置いていると頤が冷たくなって不快だ。今日は手をポケットに入れて考え事をすることにした。

ポケットに手を入れて椅子の背もたれに首まで預けてぐっと背筋を伸ばすと、目の前が一瞬暗くなってくらくらした。本当に疲れている。本当に体がだめだと言っている。体の声に耳を貸さないのではない。聞く暇がないこともない。ただ、真摯に声を聞いても自分ではどうしようもないこともあるのだ。理性なのだろうか、体裁とか自分の仕事で占める小さな利権なのだろうか、給料のことをまだ心配しているのだろうか。体を労わなければならないことはわかっていても、本能的に何かをかばおうとして僕は働き続けている。

ポケットの中の手がじっとりと湿っていやな感じだ。熱さましの薬をもう一服飲むべきだろうか。

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