陽だまりの子

Child In The Sun

026. 蜃気楼(2)

キャンディのかけらがほしかっただけなんだ。キャンディのかけらが。寸刻の間、この舌の上を滑る甘い感触がほしかっただけなんだ。でも、誰もがそれをほしがればキャンディは一個では到底足りない。一袋のキャンディでも足りない。一箱、一ケース?私たちはみんな同じキャンディをほしがって、そのキャンディがもともとかけらもないことに気がつかなかった。それなら、今自分の舌の上にあるこのキャンディのかけらは何だろう。甘い、固い、キャンディのかけら。また別のキャンディなのか?