陽だまりの子

Child In The Sun

023. 時の流れ

精神病を理由に総務部に異動になって明日でちょうど一週間。残業は絶対にさせないという言葉の通りに毎日定時に帰される。しかし、月に300時間労働、休日出勤、終電まで残業の日々が日常化していたため、午後七時半に家に着いても何をすればいいのかわからない。時間だけが手元に余り、精神病の誘因となった焦燥感がいや増すばかりだ。安定剤を飲んで、晩飯を作る。家に着く時間を遅らせるために、英会話に通い始める。何だろう、本末転倒だ。おかしい、と体が言い始めている。異動になる前、体重は7キロ落ちた。異動になってから明日でちょうど一週間。体重は増えない。

自分の手元にある時間を、私は常に消費してきた。時間は貯めておくことができないからだ。常に消費するしかない。ただ、浪費はしないようにと心がけてきた。無駄はやめよう。自分の手元にある時間は限られている、これを減らすことは容易くとも増やすことはけしてできない。時間を大切にしよう、時間を守ろう。だからどんなに忙しくても苦にならなかったし、体を酷使することも心を理性で抑えつけることも簡単だった(結果、私の人格は破綻してしまったのだが)。

私は今、手元にある時間をただ見つめていることしかできず、こぼれ落ちていく時間を引き止めることもできない。何かできるはずなのに、私には何をすることも禁じられている。私のために。だが、それは私の時間のためではない。私は私の時間の中を生きている。私は私一人でこの世界を生きているのではないのだ。それを理解しろとは誰にも求めない。ただ、私はこの手元にある時間を無駄にしないよう日々を生きるだけなのだ。