陽だまりの子

Child In The Sun

019. カラス

光なく影なく人の声もなく
耳に届くは風と波の激しくも懐かしい声
筆の跡も生々しい空気の流れと
頑なにそれを溶かそうと景色にむしゃぶりつく雨粒

名前も知らないこの土地で
私は行く場所も知らないのに
雨風にされるがまま茫然として
だが安心しているのはなぜだろう

闇がアスファルトに身を横たえ
ゆっくり私を差し招く

誰もいないこの道を
誰かが敷いたこの道を
ただお前一人のものにしてやろう

潮風にざらつく肌と
濡れて頬に貼りつく黒髪
名前も知らないこの土地で
行く場所も知らないのに
私はこの闇に選ばれた

誰もいないこの道が
誰も私を追わないこの道が
ただ私一人のものになる

光なく影なく人の声なく
青ざめた額でただ一人の夜
闇がアスファルトに身を横たえ
ゆっくり私を差し招く